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話をしたい、という気持ちが、ものすごく高まっている。
ちゃんと、正面から、本気で、本音で。
でもそれをやればきっと何もかもが終わる。
彼が荷物をまとめてここから出ていくのに、どれくらいの時間が必要だろう。
せっかく居心地よく作ったこの家。あの庭。手放したくないよ。
本当に、10月1日の、あの夜まで、本当に一点の曇りもなく、私は幸せで恵まれているって思っていたのにね。
夕暮れの街を自転車で走りながら「こんな夢みたいな贅沢な時間、いつか『あの頃は夢みたいだった』って思うだすことになる限られた時間なんだろうな」って思ってたけど、まさか、こんなにも早く唐突に終わるなんてね。
私は結局、家とか、そういう形骸のために、一緒にいたいんだろうか。
愛されていないと感じることはつらい。